かつしか区民大学講座「大野隆司氏が語る木版画の魅力」 2021.01.31
リポーターのおくたともこです。
私が気になる葛飾区内のイベントにおじゃまして、このブログをご覧の方だけにその魅力をお届けします!
今回は…1月17日(日)に開催された、かつしか区民大学講座「大野隆司氏が語る木版画の魅力~ネコとダジャレで世の中を明るく~」をご紹介。
高砂地区センターを会場に、十分な感染対策をしたうえで開催された講座には、幅広い年齢層のおよそ40名の方が来場されました。
企画者からの挨拶で「世界でいちばんいい人です。」と紹介され、この日の講師である木版画家の大野隆司さんが照れながら登場。会場は一気にほんわかムードに包まれます。
葛飾生まれの大野さんですが、しばらくは千葉県柏市に住んでいて、7年前に葛飾区に戻ってきたそうです。こんな時だからこそ何か自分にできないか、みんなを元気にしたいと、新しく制作したカードを葛飾区に寄贈、私たちの目にも多く触れることとなりました。
大野さんは授業中に手も上げられないほど内弁慶の小学生でしたが、南葛飾高校へ進学後、面白い友達に出会うなどして少し性格が変わったそうです。30歳の頃、「絵の中に物語がある」と谷中安規氏の作品に魅了され、独学で版画家を目指すように。
最初は不気味なもの(ご本人いわく)を描いていたそうですが、ご家族が入院された際、励ますために描いた版画が同室の方たちに好評で、「人を楽しませたい、役に立ちたい」とその後はかわいい猫の作品を作るようになったとのこと。「デッサン力がなくて猫の横顔は描けない」と自虐的なコメントも、何だか大野さんらしくて心が温まりますね。
やりたい仕事のひとつだという障害のある青年との2人展では、「野心も何もないこの純真な文字にあてる絵なんて描けない」と最初は思ったそうで、2回目は「月」「月と猫」などテーマを決めて挑んだとのこと。お人柄がにじみ出ています。
休憩後は、制作の様子を見せていただけるということで、会場にいる皆さんがスクリーンに映し出された手元に見入っていました。下書きにそって、何の迷いもなく彫刻刀が進み、ものの数分で1枚の版画が完成。早い!とにかく早い!
そして、受講者からの質問タイムへ。昔からのファンの方から大野さんを最近知った方まで、たくさんの興味深い質問がありましたので、いくつか抜粋してご紹介します。
Q:「何回やっても上手く描けない時はどうしているのでしょうか?」
A:「失敗したら塗ればいいんです。棟方志功も若い時はそうでした。」
Q:「どんな時が一番楽しいですか?」
A:「考えている時です。ボーっとしている時は発想が動いている時で、彫る時にはすでに頭の中で完成しています。」
Q:「背景が黄色いのには何か理由がありますか?」
A:「黄色と黒はバランスがいい。フランスのポスターを見てお洒落だと思って、幸福の黄色い版画ということにしました。あと、黄色がいちばん目に入りやすいですからね。」
会場壁面には、読売新聞夕刊(第1・第2金曜)で連載中「言葉のアルバム」の挿絵が展示されていました。どれくらいのスピードでお仕事されるかを聞くと、「対象となる人の座右の銘と略歴だけが届いて1週間から10日で完成させます。」とのこと。どんなデザインにするかは30分程で思いついて、あとは楽しみながら作っているそうです。
また、ネーミングまで手掛けた「ねこのこたわし」ですが、実はこれ、葛飾区伝統工芸品の『棕櫚たわし』。売れると葛飾の職人さんを支援できるということで描いたそうで、まさに葛飾最強のコラボですね。
大野さんは「作品はすべて、友人やひとりのため、その人を励ますために作っています。そうすると同じ考えの人が共感するので。」と話されました。しっかりと目の前にいる相手を見て描いているからこそ、メッセージが強く心に響くのでしょうか。
コロナ禍では気持ちが軽くなるような作品を数々と生み出され、「ダジャレで笑いを誘いながら伝えていきたい。」とニッコリ。
葛飾区でのご活躍、さらに期待しています!
【大野隆司氏プロフィール】
1951年、葛飾区生まれ。南葛飾高等学校卒業。
谷中安規氏(1930年代に活躍した版画家)の作品に魅了され、独学で版画家を目指す。
愛猫家。現在、大野さんのお宅にいる猫ちゃん達の名前はチビちゃん、ハーちゃん、ナナちゃん。
活動:「通販生活」挿絵、読売新聞夕刊「言葉のアルバム」挿絵、柏を中心に各地で作品展を開催
著書:「へいきじゃないけどへいきだよ」(主婦の友社)、「ねこのてからのおくりもの」(新潮社)他
◇版画家 大野隆司さん(葛飾区公式サイト)
http://www.city.katsushika.lg.jp/information/kouho/1005541/1023502.html
◇大野隆司オフィシャルサイト
https://ohno-takashi.wixsite.com/takashi-ohno