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銭湯「背景画」制作風景の見学 2022.12.13

 

リポーターのおくたともこです。
私が気になる葛飾区内のイベントや場所におじゃまして、このブログをご覧の方だけにその魅力をお届けします!

今回は…12月4日(日)に東堀切のさつき湯で行われた「背景画」制作風景の見学会をご紹介。

銭湯背景画制作風景の見学)さつき湯外観1 銭湯背景画制作風景の見学)さつき湯外観2

会場となった「さつき湯」は、京成線「お花茶屋」駅から徒歩約10分、上千葉小学校バス停を降りてすぐのところにある昔ながらのいい感じの銭湯で、道路をはさんで反対側にはゲートボール専用広場を持つ上千葉南公園があります。

こちらのイベントは年に1回開催され、今年が6年目だそうで、日頃から銭湯をよく利用しているシニアの方を中心に、銭湯大好きという小学生やわざわざ区外から駆けつけた銭湯ファンなど約50名が参加、3部制で見学を行いました。
記念品として配布されたのは、葛飾銭湯オリジナルバッグやかつしか銭湯マップのほか、東京都浴場組合公式キャラクター「ゆッポくん」のタオルとマスクケース、さらに都内の銭湯5回分の入浴が無料になるクーポン等で、これだけでもかなり嬉しいお土産になりますね。

銭湯背景画制作風景の見学)さつき湯ご主人 銭湯背景画制作風景の見学)記念品

葛飾区浴場組合連合会の会長でもある「さつき湯」ご主人の石倉幸雄さんから、「昔の銭湯は健康と衛生の場という役割だけでなく、みんなが集まる社交場であり、教育の場だった。でも最近は小学生からあの煙突はなに?と聞かれるほど銭湯のことを知らない子供も増えているので、先月には親子無料キャンペーンを実施した。これからも銭湯文化を広めていきたい」と挨拶がありました。

現在では24件となった葛飾区内の銭湯がこれ以上減らないよう、葛飾区浴場組合連合会では葛飾区と協力して様々な取り組みを行っているそうです。
例えば、営業時間前の銭湯の脱衣所を利用して介護予防につながる脳トレや体操などを実施する「ふれあい銭湯事業」や70歳以上の区民が区内の公衆浴場(銭湯)を通常500円のところ250円で利用可能とした「くつろぎ入浴事業」。その「くつろぎ入浴事業」のPRイベントとして、葛飾フィルハーモニー管弦楽団のメンバーによる演奏会なども毎月開催しているのだとか。こちらは区内在住の方であれば誰でも参加が可能なので、要チェックですね。

こうしたイベント以外にも、各銭湯では葛飾区と防災協定を結んでいて、災害時には区民に対して飲み水の供給や保存食の備蓄などをしているとのことですから、銭湯が地域にとって重要な拠点であることがわかります。

銭湯背景画制作風景の見学)下駄箱 銭湯背景画制作風景の見学)受付 銭湯背景画制作風景の見学)休憩スペース

暖簾をくぐってすぐの下駄箱に懐かしさを感じながら奥へ進むと、受付横には飲み物(コーヒー牛乳あります!)を飲んだり、中庭を眺めながらマッサージチェアで寛げる休憩スペースがあるので、入浴後もゆっくりできそう。主役のお風呂もゆったりとしていて、明るく清潔感がある洗い場と広々とした脱衣所が居心地のよい空間を作り上げています。

ここ「さつき湯」は、地下110mから汲み上げる地下水で沸かす柔らかなお湯や入湯料で入れる湿式サウナ、身体が芯から温まる日替わりの薬湯が自慢の銭湯で、季節や行事に合わせた変わり湯も楽しみのひとつ。
サウナには種類があって、湿式サウナ(ミストサウナ、スチームサウナ等)は乾式サウナ(いわゆるドライサウナ)と異なり、温度が40℃~60℃と低いため、子供や高齢者でも比較的入りやすいとされています。

銭湯背景画制作風景の見学)洗い場 銭湯背景画制作風景の見学)シャワー 銭湯背景画制作風景の見学)脱衣所

進行役を務める葛飾区産業観光課学芸員の谷口榮さんのお話によると、区内の銭湯には葛飾ならではの背景画を描いてもらうようにしていて、今回は、『絵本江戸土産』(国立公文書館内閣文庫蔵)の「四ツ木通引舟道」がモチーフになっているそうです。ちょうど「葛飾区郷土と天文の博物館」前の親水公園(当時の曳舟川)あたりから見た風景が描かれているということで、なんだか親しみがわきますね。
奥に描かれた富士山は実際には見えないとのことですが、これは、江戸時代の浮世絵では西を表すものとして富士山、東を表すものとして筑波山がよく描かれていたことによるものではないかということでした。

銭湯背景画制作風景の見学)進行役の谷口さん 

谷口さんから、「背景画を描く財産のような人」と紹介された中島盛夫さんは日本に3人しかいないとされる銭湯絵師のひとりで、1945年生まれの御年77歳。福島県相馬郡飯舘村のご出身で、1964年の上京時に住んでいた墨田区の銭湯の背景画に魅せられたのがこの世界に入るキッカケだったとのこと。昔から絵を描くのは好きだったそうですが、下絵を描かずにこれほど壮大な風景を描けるなんて、本当にすごいとしか言いようがありません。区外から参加された銭湯ファンの方も、「今日は中島絵師の貴重な制作風景を見ることができてよかった」と感激されていました。

見学会の最後は中島さんへの質問タイムです。
「色は何色くらい使っていますか?」という質問の答えは、「三原色つまり黄色、赤、青。あと白色だけ。他は混ぜて色を作っているんだよ」とのこと。あれだけ鮮やかな背景画の色彩のほとんどが絵師によって生まれた色とは驚きました。
「どれくらいの枚数を描いていますか?」の問いには、「いちばん多いときで月に25枚くらいだったかな」ということで、計算すると年間およそ300枚!ペンキのローラー使いを考案して背景画制作の時間短縮に貢献された方とはいえ、相当な労働力です。
せっかくなので、「何か体力作りをされていますか?」と聞いたところ、「特になにもしていない。カラオケでストレス発散しているくらいかな」と余裕の笑顔。おみそれしました。

 銭湯背景画制作風景の見学)参加者が背景画を撮影

取材を通して、「後継者探しも含め、これからも銭湯文化を守っていきたいと思っているので、皆さんも地元の銭湯にぜひ行って欲しい。そうしたら銭湯はそのぶん長く残ることができるはず。できれば入浴するだけじゃなく、地域にとって銭湯がどんなに大切な存在かということも少し考えてくれたら嬉しいね」というさつき湯ご主人の言葉がじんわりと沁みました。

「そうだ銭湯、行こう!」
これからの季節、体の芯から温まりたいですね。

 

◆葛飾区浴場組合キャラクター
名前は「ゆ2 (ゆーゆ)ほのか」ちゃん。葛飾区にちなんだ花しょうぶ風の髪型がチャームポイント。

銭湯背景画制作風景の見学)葛飾浴場組合キャラクターゆーゆほのかちゃん

◇葛飾銭湯(外部サイト)
https://katsushika1010.com/
葛飾区浴場組合連合会が運営する葛飾区内の銭湯情報サイト。区内の銭湯一覧やイベントのお知らせほか、東京都内の銭湯無料入浴券などお得な情報満載です。

◇ふれあい銭湯事業(葛飾区公式サイト)
https://www.city.katsushika.lg.jp/kurashi/1000052/1002142/1002182.html

◇くつろぎ入浴事業(葛飾区公式サイト)
https://www.city.katsushika.lg.jp/kurashi/1000052/1002144/1002196.html

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