講座「意外と知らないノラ猫のはなし」 2023.03.31
リポーターのおくたともこです。
私が気になる葛飾区内のイベントや場所におじゃまして、このブログをご覧の方だけにその魅力をお届けします!
今回は…3月21日(火・祝)に健康プラザかつしかで開催された講座「意外と知らないノラ猫のはなし」をご紹介。
京成電鉄「青砥」駅から徒歩で約15分、会場の健康プラザかつしか(葛飾区保健所)は、水戸街道青戸4丁目交差点のひとつ奥の場所にあり、2階には今回の講座を主催した生活衛生課も入っています。
祝日の午後に行われた講座には、小学生を含む約20名の参加者が集まりました。
講師は奥戸にある宮田動物病院長の宮田容太先生。
宮田動物病院は1970年に開院した病院で、「猫博士」「猫ひげ先生」と呼ばれるほど猫に詳しいお父様の後を継いで、2代目の院長になったのは2012年とのこと。「飼い主さまと動物をよく見ること、その子にあった治療の選択肢を一つでも多く提供できるよう心がけている」という宮田先生は、お父様が築いた繋がりを大切に下町の猫・犬のかかりつけ医として地域の動物たちの健康を見守られ、飼い主さんを支えていらっしゃいます。
話の内容は大きく2つ。ひとつめは『外のネコについて』です。
外のネコ、いわゆる「ノラ猫」という言葉の定義は難しく、ここでは「飼い主がいなくて野外で生活するイエネコ」とされていましたが、飼い主がいても外との行き来が自由な猫やエサをもらうなど地域で管理されている猫もいること、猫に対する思いも様々なことから、飼い猫とノラ猫の境界線は曖昧で、最近では「ノラ猫」という呼び方も避けられているとのことでした。
参加者からの事前アンケートにあった「初めてノラ猫を触るときの注意点」に対する先生の回答は「基本的には触らないこと」。
感染症や病気の心配だけでなく、触った人間がノミを家に持ち込むことも多いそうで、宮田先生も学生時代、飼っている猫がノミだらけになった経験があるそうです。
また、「ノラ猫」の相談に対する具体的な対策について、「家の敷地に入ってくる」場合には猫の身体能力や行動を考えて立体的に侵入経路を防ぐこと(水の入ったペットボトルは役に立たないようです)、「鳴き声」に関しては未去勢のオス同士の喧嘩や発情、病気やケガの痛みによるものなどあるので、なぜ鳴くのか理由を考えて対応をすること、「増えて困る」場合には出産しないようメスの不妊手術が最優先であることなど話されました。
2つめは、『高齢ネコでよく見る病気』について。
特に多いものとして、腎不全や甲状腺機能亢進症、心臓病や腫瘍、感染症が挙げられました。
猫は犬より腎臓の病気が多いそうで、それは原産が乾燥地域であること(水分を保持する能力が高く腎臓を酷使する)、完全肉食動物であることに由来しているのだとか。甲状腺機能亢進症については、「よく食べているのに痩せていく」ことから心配して来院するケースが多く、心疾患を併発していることも多々あるそうです。また、猫の乳腺腫瘍はほぼ悪性で転移しやすい、フィラリア症については疑いのある症例を経験しているので「ノラ猫」「外飼い猫」については予防しておいた方が良いということでした。
その他にも、それぞれの治療方法や医療の高度化で寿命が延びたかどうかのお話など、大変興味深いものばかりでした。
どれも命に直接結びつく病気です。動物は言葉を話せないので人間が気付くしかありません。
「いつもと違う」「何かおかしい」と思ったら、少しでも早く動物病院に連れて行くことが重要ですね。
続いて、生活衛生課より葛飾区の「飼い主のいない猫」に関する取り組みについてのお話です。
猫に対する苦情や相談は様々あり、猫を迷惑な存在とみている人はいるものの、元々は飼い主から捨てられたり、それが増えたりしたものなので、猫のせいではないというのが前提にあり、「飼い主のいない猫の問題」を解決するには、猫が好きな人も嫌いな人も「身近な地域の問題」として、原因を含め一緒になって考えていくことが大切だということです。
また、「かわいそう」という気持ちだけでエサやりをすると、住みついて繁殖して数が増えてしまい、猫が地域の嫌われものになってしまうこともあるので、そうならないよう、周囲の人たちに理解してもらい迷惑をかけないようにするためには、エサをあげるだけではなく、猫の数が増えないように(1代限りとする)不妊去勢手術を施し、トイレの設置や清掃、食べ残しの片づけなどを行って、きちんと管理することなどが伝えられました。
葛飾区では「飼い主のいない猫」について不妊去勢手術の助成金制度を設けていて、個人でも団体でも利用が可能(条件等あり)。
命あるものとして、飼い主のいない猫を地域猫(片耳がV字カットされた猫)として地域で見守りながら飼育していく地域猫活動の推進への協力を求めています。
講座の最後は質疑応答の時間です。
「地域猫」「エサやり」「看板」「虐待の対応」「助成金」についての質問のほか、「区民にできることがあれば教えて欲しい」などの意見や要望も出ていて、参加された皆さんが動物のことを真剣に考えていることがよくわかります。
講座の中で宮田先生もおっしゃっていたように、動物に関する考え方や思いは人それぞれです。
動物が嫌いな人も好きな人も、ペットを飼っている人も飼っていない人も、「飼い主のいない猫」について正しく理解し、皆で考えることで何か新しい解決策が見つかるかもしれません。今回の取材を通して、ペットの飼い主として「人と猫(動物)が共生する社会の実現」のために自分に何ができるのか、あらためて考えていきたいと思いました。
<猫を飼っている方へ(葛飾区より)>
・猫は屋内で飼いましょう
・繁殖を望まない場合は不妊去勢手術をしましょう
・迷子札など身元の表示をしましょう
・さいごまで責任をもって飼いましょう
◇飼い主のいない猫について(葛飾区公式サイト)
https://www.city.katsushika.lg.jp/kurashi/1003399/1003401/1029421/1029432.html
◇動物について(葛飾区公式サイト)
https://www.city.katsushika.lg.jp/kurashi/1003399/1003401/index.html
ペットの適切な飼い方やルール・マナーのほか、飼い主のいない猫についてや動物の防災対策(避難所における動物飼育のガイドライン含む)、これからペットを飼う方へのポイントなどが掲載されています。ぜひご覧ください。
◇宮田動物病院
https://dr-nekohige.jp/
葛飾区奥戸3-19-20